アフェクティブイノベーション協会

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ai Cafeとは、協会理事による、それぞれ個別にテーマを設けた勉強会です。
AIA理事による、それぞれ個別にテーマを設けた勉強会です。 テーマに対する発表と参加者による活発な意見交換が特徴です。




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SKEL セミナー
報告者:キリン株式会社 キリン食生活文化研究所 太田恵理子
日時 :2018 年8 月23 日(木)
    19:00(開場 18:30) ~ 21:00
講師 :椎塚久雄(SKEL)
テーマ:顧客体験デザイン~ブランド戦略の実践はいかにあるべきか

    前々回から「プラットフォーム」についての議論が繰り広げられています。「体験価値」を共創する「プラットフォーム」がこれからの最強のビジネスモデルにつながってくる・・いよいよ今日は本題のプラットフォームについての議論だと期待して臨みました。

    「我々は場の中に生きている」。プラットフォームもひとつの「場」である。では、その「場」とはなにか。椎塚先生は、電磁場を引き合いに、「場」の意味について議論をすすめます。

    曰く、「場」とはstatic なものではない。あたかもそこに電磁波ができるように、常に動いているdynamic なものであると。もちろんプラットフォームもstatic なものではない。「物事はすべてつながっている」。回路のように。つなぐのは共通性とは限らず、”類推(アナロジー)”を用いて、つなげていくのだ。「アナロジーとは他から借りる力である」

    いよいよプラットフォームの話だ!と身構えたところ、ひとしきり「ブランド」についてのレクチャーが続きました。

    “ブランドは「モノのよさ」だけでなく、「体験全体の価値を蓄積し、想起させる基盤/生活者との間で共有化できるテーマを見定め、生活者を主語にした課題や願望を解決支援する基盤/効率的な知覚形成を重視し、戦略投資の傾斜配分を実施するレバレッジ効果の基盤」という「3つの基盤=プラットフォーム」へと進化してきていると言える”
    ”体験価値は顧客の頭の中で知覚される。そこに企業のコントロールは及ばない。顧客と体験価値を共創するプラットフォームとしてのブランドは、顧客のものであって企業だけのものではない“
    またしても、本論のプラットフォームに関する議論に深入りしなかった本日の研究会。私は日々の仕事の中で、生活者の(自分自身も気づいていないかもしれない)問題を発見(=インサイト)し、どんな解決策が提示できるか(=プロポジション)を探索する活動を行っていますが、「価値共創のプラットフォームとしてのブランド」、という言葉が気になりました。このあたり、次回に期待です。
    さて、アナロジーを“横串”に例えて説明された椎塚先生。二次会は“横串”からのアナロジーで、有志は焼鳥屋さんに繰り出して議論が続いたようです。

<報告者より>
    今回のセミナーで一番印象に残ったのは、実はこの“横串”の話です。アナロジーを「他から借りる力」と定義づけられた点が、これからのビジネスに大きなヒントになると感じました。また、プロジェクトにおいて、情報収集からではなく、「仮説思考(アブダクション)」によって問題解決の全体像を示してから開始することで、議論が隘路に入り込んだり、不必要に時間をかけたりすることなく答えにたどりつくことができる」という議論も。

    これに必要なスキルこそがアナロジー力なのではないでしょうか。そのためには、借りるべき「他」をどれだけ引き出しとして持っているか。たくさんの「他」を持っているからこそ、一見無関係とも思える事象を回路のようにつないでいくことができる・・・ 「イノベーションとは新結合」である、というシュムペーターの言葉が思い起こされました。

    実はここ数年、「ブランド」もしくは「ブランディング」という言葉に懐疑的になってきていた私。今回の議論の中では、「プラットフォームとは提供者とユーザーが共創するdynamic な場であり、こうしたユーザーとの接点「場」がなければブランドもない」ということが示唆されました。次回こそ、ブランディングが起こる場であるプラットフォームについて、議論が進むことを期待しています。

    次回は9 月27 日、有楽町の九州大学東京オフィスで開催予定です。