アフェクティブイノベーション協会

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ai Cafeとは、協会理事による、それぞれ個別にテーマを設けた勉強会です。
AIA理事による、それぞれ個別にテーマを設けた勉強会です。 テーマに対する発表と参加者による活発な意見交換が特徴です。




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SKELセミナー
日時 :2019 年6 月27 日(木)
    19:00(開場 18:30) ~ 21:00
場所 :九州大学サテライトオフィス(有楽町)
講師 :椎塚久雄(SKEL)
テーマ:アフェクティブイノベーション XVI(1)
    時代が求める「感性コミュニケーション」
    ー 感性コミュニケーションの本質を捉える ー
今回のSKELセミナーのテーマは、「時代が必要とする感性コミュニケーションの重要性」ということで、
少し理論的なことが多く含まれていたのですが、
内容的には現代がかかえるコミュニケーションの本質的な部分を取り上げました。

 「あいまいなこと」を「あいまいに考える力」。
これについては、私たちは、あまりにビジネス社会からくる効率・実用・功利主義の影響を受けていて、
あいまいさを避け、揺らぎを嫌い、具体・客観・論理を奨励する傾向にあるのではないでしょうか。
これは、デカルトとパスカルの主張がアンチテーゼである状況の中で、
時代は近代合理主義を選んだことからの結果であると考えることができます。
私たちが“コミュニケーション”を行うということは、いったい何を意味するのでしょうか。
人間は頭で「理解する」という能力を持っています。
それを考えると、送り手側の主張と受け手側の主張があることに気づきます。
つまり、「送り手の論理」対「受け手の論理」という構図が出来上がる。
これはいったい何を意味しているのでしょうか。

 今日のデジタル通信の基礎を築いたのはアメリカのベル電話研究所のクロード・シャノンである。
クロード・エルウッド・シャノンです。彼は、情報理論の考案者であり、情報理論の父と呼ばれた。
情報、通信、暗号、データ圧縮、符号化など今日の情報社会に必須の分野の先駆的研究を残した。
アラン・チューリングやジョン・フォン・ノイマンらとともに今日のコンピュータ技術の基礎を作り上げた人物である。
当時は、ノイズのないクリアな信号をいかに送るかが主要な課題でした。
時代は変わり現代では、受け手の論理、
つまり受け手の感性が重要な意味を持つようになりました。
そこでは、冗長性とエントロピーという2つのキーワードが重要なはたらきを持ってきます。
それがここで議論する「感性コミュニケーション」の本質的なところにつながり、ここでの核となる概念です。
シャノンが工学の分野に貢献したことは言うまでもないが、
ウィーバーは一般的な情報としても抽象化できると指摘していたことは注目すべきことである。
つまり、情報の本質である信憑性や意味性においても、
この理論が適合できることを指摘していたことは、注目に値する。
その証拠には、シャノンが提唱する情報エントロピーの概念は、
通信技術のみならず情報社会の哲学的意義にも影響を与えてきたことからも分かるであろう。

 マスコミ報道や風評流布の類いが世間を惑わす原理も、基本的には誤り訂正やノイズの原理と同じです。
この時、選択肢の確率は情報の信憑性と捉えることができるし、
欺瞞や誤謬あるいは精神不安など、判断を歪ませるものすべてがノイズと捉えることができるのです。
更に、伝送系の能力は解析能力に通ずるところがあり、能力を超えた情報量はむしろ有害となろう。
情報は多すぎても少なすぎても混乱を招くことになろう。

 送り手が送りたいことは、矢印の色が「はっきりしている部分」と「ぼやけてにじんだ部分」とがある。
前者は、送り手が具体的に考え明示できる、いわば「クリスプな内容」であり、
後者は、曖昧に考えていて明示できない、暗示に任せたい、「ファジィ的」な内容である。
それに伴って、表現される情報もクリアな矢印分(クリスプな情報)と、
にじみ部分(ファジィ的な情報)ができるのである。
そして受け手は、この情報を受信して読解することになるが、受け手が理解することもまた、
色がはっきりする部分とにじむ部分とに分かれる。
前者は、送り手の情報を逐語訳的・具体的に把握する「クリスプな理解」であり、
後者は、受け手自らが創造的・観照的に情報を解釈する「ファジィ的な理解」である。
シャノン-ウィーバーの通信モデルは、6つの要素で構成されている。
ここで、“通信”という言葉が出てくると難しく感じる人のいるのではないでしょうか。
それは、日常的に私たちが使っている“コミュニケーション”に置き換えて考えると分かりやすいでしょう。

 ゲーテの格言によれば、
「考える人間の最も美しい幸福は、究め得るものを究めてしまい、究め得ないものを静かに崇めることである」
ということです。
ドイツの文豪ゲーテが、同時に優れた自然科学者であったことはあまり知られていないようです。
形態学の創始や色相環の発明など、その合理的、論理的、客観的な思考によって
科学の面でも人類に数多くの貢献を残しています。
そのゲーテにとって、やはり「この宇宙とは何か」「人間とは何か」そして
「神とは何か」は、生涯を懸けて取り組んだ“大いなる問い”であったのです。
その問いに対し、ゲーテは、「“大いなる合理的・論理的・客観的思考”をもって解明をしようとしたが、
ついに答えは出せなかった」と言われています。
これは、「出せなかった」というより、最終的には「不可知(unknowable)」である
という結論にたどり着いたと言われているのです。

 感性コミュニケーションの内容はまだまだ尽きません。
感性イノベーションは感性コミュニケーションと密接に関係しています。
それらについては機会をあらためて議論したいと思います。