アフェクティブイノベーション協会

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ai Cafeとは、協会理事による、それぞれ個別にテーマを設けた勉強会です。
AIA理事による、それぞれ個別にテーマを設けた勉強会です。 テーマに対する発表と参加者による活発な意見交換が特徴です。




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SKEL セミナー参加レポート
報告者:小笹史郎(NTT コミュニケーションズ)
日時 : 2018 年3 月22 日(木)
    19:00~ 21:00
場所 :九州大学サテライトオフィス(有楽町)
講師 :椎塚久雄(SKEL)
テーマ:エンゲージメントの本質に迫る
              ~優れた協調関係がイノベーションへ向かう社会物理学の意味~
「エンゲージメント」のキーワードについては昨年のセミナーでも椎塚先生がお話されたところではありますが、個人的に非常に興味があるテーマです。社内に持ち帰って同僚と議論した結果などを頭に思い浮かべつつ当日の内容をレポートします。


                  準備中の先生 - これから始まります

「まねをする」とは?

まず、椎塚先生は「赤ちゃんは言葉をまねしていろいろなことを覚える」というお話からスタートされた。人間の頭の中にあるアイデアや行動がどのように人々に伝搬していくのかを従来の社会科学的なアプローチにより紐解くことは困難であったが、いまや人々は、コンピュータと繋がっているので、いろいろなデータを手にすることができ、それによって、従来の社会科学が成しえなかったことが、「社会物理学」として捉えることができるようになり、この新しいアプローチからの問題解決によって新展開を可能としたことは注目すべきことであると感じた次第です。
次の2つのスライドは、私にとって興味がそそられました。つまり、社会物理学はアイデアの流れ(フロー)と社会的学習(椎塚先生はこれを「ストック」と言っている)の2つの中核的な概念で構成されているというのです。この「アイデアの流れ」の中に「探求」と「エンゲージメント」があることを知り、私はさらに興味を覚えました。それは、なぜここにエンゲージメントが出てくるのか強烈なインパクトを与えられたのです。




               ストックとフローのイメージ

ストックとフローについて

ストック(蓄積量)とフロー(流量)は経済学の概念である。アメリカの作家ロビン・スローン(Robin Sloan)は、この言葉をメディアの喩えに用いて次のように書いている:フローとはフィードだ。記事やTweet、つまり人々にあなたの存在を知らせる1日ごとや数時間ごとの更新のことである。一方、ストックとは長持ちするモノだ。つまり、あなたが制作し、2 ヶ月後や2 年後になっても現在と同じ価値のあるコンテンツのことである。こうしたコンテンツは検索によって発見される。ゆっくりと、しかし着実に広まり、少しずつファンを増やしていく。スローンは、フローを保ちつつも、その裏でストックを築くことに励むのが成功の秘訣だと話している。

既に私が出席できなかった、この社会物理学のシリーズの初めに学んだようですが、「現在は、人やモノとコンピュータがつながる時代(IOT やIOP)であり、社会は制御不能になる一歩手前である)との説明があり、そこに社会物理学の存在意義があると思いました。椎塚先生は、社会物理学の2大要素「アイデアの流れ」と「社会的学習」をマクスウェルの方程式からも説明できると説明されましたが、その理解は私の今後の課題にしたいと思います。

固有振動数について

固有振動数と言う言葉は、物理で出てくるものですが、椎塚先生の説明によると、それを企業が持つある種の「文化」のようなものと対応付けることができるということですので、これも私は大変感動しました。なぜならば、企業も人々もそれぞれ固有の振動数を所持しておりそれらの振動数が一致することでより大きな振幅を発生させることから、私の中では「ストン」と腹に落ちました。コミュニティや行動にもアイデアフローが存在するから、アイデアフローの速さが冒頭の「赤ちゃんが言葉をまねして覚える」、つまり「社会的学習」によりスピードが決定する事象そのものが、社会物理学が成立する理由ではないかと思いました。


これに関して、私(小笹)の感想を述べてみたいと思います。それは、兵隊の行進振幅で落ちた橋の例(フランス1858 年)です。


フランス バス・ジューヌ吊り橋
https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/melde/heitai.html


また、最近では2000 年のイギリスでも起きています。


イギリス ミレニアム・ブリッジ
http://www.sydrose.com/case100/218/


これら橋のみならず、人間同士の振幅協調が全て合致し振幅幅が大きくなってしまった場合妄信的に(極端に言えばカルト主義や軍国主義など)陥る可能性はないのだろうか、と言うのが、この固有振動数で感じた私の感想です。

ここで、ちょっと思いついた「空気を読む」ことについて少し

「外人には空気を読む力がない?」だから、共感度を高めるためのマーケティングコストがかかり過ぎ、これに対して日本には「のれん」「老舗」などのブランディング戦略が存在しているなどの議論があるのは興味深いです。


                ① 越後屋の「のれん」                           ② 内藤誼人「空気のよみかた」

① http://rekishi-roman.jp/img/img-kura/etigoya-4-z-.jpg
② https://systemincome.com/tag/%E5%86%85%E8%97%A4%E8%AA%BC%E4%BA%BA

Facebook 上で行われた実験「投票に行こう」に関しても親しい友人が与えた方が、影響度が4倍高い話についても空気の読める日本人ならば当たり前のことだと思います。ここで、「はたして日本人は皆空気が読めるのだろうか」について考えてみます。
「カナダの心理学者が14万人のツイッターのつぶやきを調べました。その結果、金持ちほどポジティブな発言をし、貧乏な人は愚痴をつぶやいていた」という結果が得られています。コミュニケーションは質より量ではないかと思います。意味のない内容でも、たくさんコミュニケーションを取ったほうが相手は好印象を抱いてくれます。


エンゲージメントを成功させるには―なぜ共同で作業することができるのか

エンゲージメントは、分かりにくい概念です。一言でいうならば「絆」みたいなものだ、ということです。今日の先生の説明では、エンゲージメントは、「チーム内のメンバー全員の間で繰り返し共同作業が行われている状態/人々の間で発生する、強力かつポジティブな直接的交流/チーム内のメンバー間で繰り返される協調的行動/コミュニティのメンバー間で繰り返し行われる協力的な交流」等々、どれも同じことを言っているのですが、なかなかぴったりした日本語はないようです。その中で、敢えて「共感共創度」というのを紹介されたので、少し納得したところです。


エンゲージメントを成功させるには次の3 つの要素が必要です。
1 交流―集団属性の人々全ての間で繰り返し交流が生まれている
2 協力―ベル研などの例からもスター性を持たせる人間からの集団意識働きかけ
3 信頼感の醸成―SNS 的には過去のやり取りの回数





本日の感想と次回への期待

今回のセミナーで、その都度椎塚先生に我が社について質問されて感じたことは下記の通りです。
「わが社(NTT)はベル研と同一業種でありながら、ベル研のようなリーダシップ性を発揮できる人材が不在であり、どのようなキャリアを積めばベル研のリーダになることが可能なのか、はたまたリーダは持って生まれた素質でナチュラルボーンリーダなのか」
このことについて、是非、次回に椎塚先生に教えを請おうと決意した次第です。


リーダシップとは天性のもの

「リーダーシップとは生まれつきの素質であり、誰もがリーダーになれるわけではない。動物の群れでも人間社会でも、各自の素質に従った天性の役割があり、それを無理に変えようとすると問題を生じる可能性がある。」というという研究結果を、英ケンブリッジ大学動物学科の研究チームが英国王立協会紀要に発表した。

http://www.afpbb.com/articles/-/2964568?pid=11245434



リーダシップとは後天的なもの(ドラッカー)
https://www.slideshare.net/hirotakaonishi/07-62466848


皆様次回も活発な議論をよろしくお願いします!
次回予定 2018 年4 月26 日(木)19:00~ 会場:九州大学東京オフィス(有楽町)