アフェクティブイノベーション協会

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ai Cafeとは、協会理事による、それぞれ個別にテーマを設けた勉強会です。
AIA理事による、それぞれ個別にテーマを設けた勉強会です。 テーマに対する発表と参加者による活発な意見交換が特徴です。




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SKEL セミナー参加レポート
報告者:太田恵理子(キリン株式会社 キリン食生活文化研究所)
日時 :2019 年1 月24 日(木)
    19:00 ~ 21:00
講師 :椎塚久雄(SKEL)
テーマ:メタ感性とトランザクティブ・メモリー~人の感性行動の本質を探る
今回は、人の感性行動の本質を探る、との副題 で、「メタ感性」についてお話が聞けるとあって、 意気込んで参加しました。生活者インサイト分析 においても、自分自身が今まで経験してきたさま ざまな事象や知見を、いかに対象者の発言とひも づけて、具象から抽象化するか、という「メタ」 の視点が欠かせないと感じているからです。





議論は、「Transaction」という言葉から始まりました。「交換」とか「取引」という意味 ですよね。そして「対人交流的記憶」である「Transactive Memory」について触れられま した。でも、椎塚先生がこの「Transaction」に反応したのは、いわゆる「論文」ということから だと知らされて、また新しいことを発見しました。つまり、論文はその著者と読者の「取引」だから だということでした。


そこから、椎塚先生の研究の流れ、電気工学→電子工学→情報工学→ファジィ理論→感性工学→イノベーション研究・デザイン論 についての話になりました。さらっと流され ましたが、次々と領域を広げ、新しいチャレンジをされているのは、本当にすごいことだ と感じます。しかもそれぞれの分野をリードする立場にいらっしゃるのですから!
“ファジィ理論までは数学がベースで、ガッチリ作られた学問だ。一方、感性工学は、「of」 という前置詞で、Engineering(工学)とKansei を橋渡ししたもの。つまり、「感性」を「工学」することを明確化しているのである。”
そして、”「感性」はいろいろな分野を結ぶ核(Kernel)のような存在である”と。話が早すぎてちょっとついていけません。
“ビジネススクールでよく教える分析的な手法は、構造を単純化し理解しやすくするが、それでは構造が限定されてしまう。一方で、デザインスクールが得意とするトポロジー(つながり方)は分析が苦手。互いに相容れない。”


“つながり島にはディスコースがある。「ディスコース」とは「社会的なやりとりがある場所において,固定的ではない状態にあるが,理解するための枠組みまたは意味の集まり(Drewery & Monk, 1994)」である”

ここで、定性的手法(眼の前にいるn=1 の個人を幸せにすることを考える)と、定量的 手法(その1 個人と似たような人がどれだけいて、ビジネスとして成立するのか)の違い について、ひとしきり議論が続きました。n=1 の世界では文脈がものをいいます。また文脈 を読み取る力が必要とされます。一方定量分析の世界では、もつれあった文脈は次元が縮 約され、わかりやすい相関関係で語られることが多いと思います。主成分分析などがいい 例ですね。

次はいよいよ、知覚・認知・感性のお話です。


“対象の知覚・認知は、それ以前に得たその対象に関連した知識・記憶を基にしたフィルターを通して行われる。フィルターの容量は記憶・知識の容量が増えるほど大きなものになる。しかも、このフィルターは個人によって異なるものである。””(フィルターは)普遍的なものではなく、経験や学習あるいは他の要素の働きかけによって、絶えず変化するものである。”

美人とはなにか? という話になりました。美人を見分けるフィルターがどこに重きを 置くかで、誰が美人とされるかが変わってくるのです。確かに時代や国によって、美人と される平均像は異なりますよね。さらに、対象の認識には大きなエネルギーが必要なこと、 “特に属性があやふやになるほどその対象の認識にはエネルギーが必要である。”

人間は怠惰ですから、なるべく効率的に判断できるように記号化します。買って安心の 証である「ブランド」などがわかり易い例ですよね。今回インド出張を控えた方がいらっ しゃいました。インドではかつてはボトル入りの水であっても、栓の締まり具合や、実際 にグラスに注いでみて色や匂いを確かめることが必要でした。今は、街中の店舗で有名ブ ランドの水を買えば、そこまで気を配る必要もない。認知のためのエネルギーが随分削減 されました。出張の苦労も少しは軽減されるのではないでしょうか。

ここで椎塚先生は、「他から借りる力」を持ち出されます。フィルター=色眼鏡と考えれ ば、自分ひとりでは偏見に満ち溢れた判断をしかねません。そこで、様々な視点(多様性) を受け入れることでメガネをかけかえ、より正しい認識フィルターを身につけることが必 要となってきます。


(話はそれますが、上の図表、楕円の周りに配置された文章は、先生が文字を一つ一つ 切り貼りして作成されたそうです。だからアニメーションもつけられます。根気のいる作 業ですよね。)
さらに議論は、SDGs や地球・社会が持つ潜在的課題の発見、そして諸分野を「感性」で つなぎ、ウェルビーイングを高めていく可能性について広がっていきます。


時間切れとなりました。感性ディスコースと、感性トランザクションメモリーを操るフ ァシリテータの役割、処方については、次回以降、詳しくお話をお聞きしたいです。


<報告者より> 以前のセミナーで、椎塚先生はアナロジーを「他から借りる力」と定義づけられました。 そして今回は、「他から借りてくる力」としてトランザクティブ・メモリーに言及されました。SKEL セミナーは、私自身の認識フィルターに揺さぶりをかけてくれる素晴らしい場だ と感じています。


次回は 2 月 28 日、有楽町の九州大学東京オフィスで開催予定です。